2019年コンビニの本部と加盟店との間にある”溝”が公になったとも言える年だったように感じます。
筆者はこれまで某コンビニエンスストアにて約10年ほど勤務をし、そのうち6年程店長を務めておりました。
現在ニュースなどで取り上げられているコンビニの本部と加盟店との間にある”溝”のようなものを感じ、「コンビニの将来性」に見切りをつけ、2018年に退職いたしました。
今回はそんなコンビニ本部と加盟店の間で起きた「本部社員発注騒動」についてご紹介いたします。
コンビニ本部社員無断発注騒動とは
このご存知でない方もいらっしゃると思いますのでコンビニの「本部社員無断発注騒動」についてご紹介いたします。
2020年1月大手コンビニエンスストアのファミリーマートの本部社員が加盟店店舗の発注を無断でおこなっていたことが発覚。
一部ニュースなどで取り上げられました。
参考:ファミマでも無断発注が発覚、本部社員が加盟店に負担を強いる呆れた実態【スクープ】
このニュースをかんたんにまとめると
このニュースの中身を見てみると、加盟店店舗で無断で発注をおこなっていたファミリーマートの本部社員は
「加盟店の負担軽減のため」
と、良かれと思い加盟店の発注を無断でおこなっていたとのこと。これだけ聞けば
と、思われる方も多いと思います。その無断で加盟店の発注をおこなっていた本部社員の方も本当に善意の想いのみで、そうされていたのかもしれません。
しかし、筆者がこのケースで悪意があると感じたのが、その本部社員は加盟店のオーナーや店長、副店長など発注を行うであろう人に
「詳しい発注方法の指導をしていなかった」
という部分です。コンビニでの勤務歴があり、ほぼ毎日発注業務をおこなっていた身として、これが事実なら相当な悪意、実質横領にあたるようなことをこの本部社員はおこなったと感じてしまいます。
そもそもコンビニの発注とは
経験の浅い加盟店に対し、発注業務の指導を怠り、無断で本部社員が発注をしていた。
これを見てもそもそも発注だとか、発注をやってあげることがそんなに悪いことになるの?というご意見もあるかと思います。
そもそもコンビニの発注とはどういったものなのかというと
発注 = 商品の仕入れ
となります。時短営業の問題なども取り上げられているコンビニ業界ですが、基本的に24時間365日営業の店舗が多いコンビニエンスストア。
そんなコンビニも例えば、同じファミリーマート同士であっても地域や店舗の規模、経営者の手腕などにより、当然売り上げ/売れる物に違いが出てきます。
なので、コンビニではその店舗ごとに発注業務を行う人が1人以上必ずいます。その店舗の売り上げや販売状況を見ながら、それに合った発注(仕入れ)を行います。
発注はパソコンやタブレット端末のように携帯できる電子端末で、商品ひとつひとつにたいして仕入れの数量を入力します。
筆者の記憶だと、コンビニで取り扱いをしている商品数/アイテム数は1,000種類以上ありました。
その1,000種類以上全てに対して、毎日仕入れを立てるのかというとそうではありません。
商品はそれぞれ「カテゴリー」化され、そのカテゴリーごとに、発注がおこなえる曜日や期間が決められています。
商品の「カテゴリー」の化について例をあげると
ポテトチップスやチョコなどは → 菓子
ペットボトル飲料や缶ビールなどは → 飲料
チキンやコロッケなどのホットスナックは → 冷凍品
というように、その商品のカテゴリーごとに発注をおこないます。
なので
◯曜日は発注をおこなう量が少ない
◯曜日は発注をおこなう量が多い
というようなことが毎週生じます。やはり発注業務をおこなう商品カテゴリーが多い日は「大変」と感じることもありました。
時には人手不足や勤務時間によっては発注業務に取りかかれず、残業をして発注をおこなうということもあります。
すべての商品カテゴリーに対して毎日発注をおこなうわけではありませんが、発注業務は「毎日」行われます。※おにぎりやお弁当など毎日発注がおこなえる商品カテゴリーもあります。
ざっくりと説明すると
店舗にある商品カテゴリーを2つに分けます。
その2つに分けた商品カテゴリーの発注を隔日でおこなうという感覚です。
コンビニの店舗にある商品カテゴリーをAとBに分けたとして
今日はAの発注
明日はBの発注
明後日はAの発注
という間隔でコンビニエンスストアの発注は行われています。
コンビニの本部社員無断発注騒動についてコンビニ元店長が真実を語る
このコンビニで行われる発注についてご紹介したところで、今回取り上げているファミリーマートで起きていた「本部社員発注無断騒動」。コンビニで起きている本部社員による無断発注の真実をご紹介いたします。
実はこの「本部社員発注無断騒動」がメディアで取り上げられるようになったのはセブンイレブンが発端なんです。
前述でも少し触れた、「時短営業」について話題になったセブンイレブン。東大阪のセブンイレブンオーナーが時短営業をおこなったことからの本部との”溝”が公になり、そこからセブンイレブン本部社員による無断発注もメディアに取り上げられるようになりました。
なぜ無断発注はいけないことなのか
ではこのファミリーマートの本部社員による無断発注騒動について加盟店に無断で発注することのなにがいけないことなのかということを考えてみます。
- 先ほどもご紹介したように発注は仕入れです。
- 仕入れた商品はもちろん無料でなく、お金を払って仕入れます。
- その仕入れをおこなうためのお金/資金はその店舗/オーナーのお金です。
その仕入れ(発注)を店舗に無断でおこなったということは店舗のお金を勝手に使った。
ということになります。レジや金庫に入っているお金を勝手に使ったようなもの。犯罪行為とみなされることなのです。
電子端末でピコピコと入力すればおこなえる発注(仕入れ)なので、この無断で店舗の発注をおこなっていた本部社員はそういった「店舗のお金を無断で使ってしまっている」という感覚がない状態だったのかもしれません。
さらに「店舗の負担を軽減しようと思って」というように善意があったため、その犯罪行為にあたることを正当化してしまったのかもしれません。
良かれと思って、善意があってなどということもポイントですが、1番ポイントなのは、このコンビニ本部社員が無断で店舗の発注をおこなってしまうことは絶対に起きてはいけないことということです。
こうした絶対に起きてはいけないことが今回ファミリーマートやセブンイレブンで発覚したため、ニュースなどのメディアに取り上げられる事態となっています。
実際にコンビニの現場で起きていた真実
先ほど筆者の考えではこの本部社員による無断発注はどこのコンビニでも起きているんではないかと述べさせていただいた真相のお話になるのですが筆者も無断発注の被害者であるからです。
某コンビニエンスストアにて約10年間勤務をしていて、本部社員が無断で発注をおこなっていたことは何回も目撃したことがあります。
今回のファミリーマートの本部社員の無断発注が発覚した原因である
「発注をおこなう電子端末が本部社員のIDでログインしたままになっていた」
こんなことはもうもはや”日常”と呼べる状態でした。
本部社員も人間なので
生真面目な人
少しだらしない人
と色々な方がいます。この少しだらしない人にあたる人は発注をおこなう電子端末をログインしたままにすることが多い印象でした。
そういった少しのだらしなさからその人の仕事に対する姿勢や意識というのを感じてしまいます。
コンビニの本部社員とは
そもそもその店舗で無断発注をおこなった「本部社員」とはどういう立ち位置、業務内容なのかというのをかんたんに説明すると
店舗のコンサルタント
店舗のアドバイザー
のような役割をになっています。セブンイレブンならセブンイレブン、ファミリーマートならファミリーマートはその地域、エリアごとに
◯◯エリア
のように分けられます。当然ですが、東京の渋谷区にあるセブンイレブンと立川市にあるセブンイレブンはエリア分けをした時に同じエリアになりません。
そのエリア分けした店舗には店舗のコンサル/アドバイザーとして担当の「本部社員」が付きます。
その仕事内容はすべて店舗のため
になるものです。いかにその店舗の売り上げが上がるか、ご来店いただくお客様に満足していただけるかというものを考えご提案するというお仕事です。
ある日起きた無断大量発注事件
筆者が実際に経験した本部社員の無断発注による、”事件”とも呼べる事例をご紹介いたします。
コンビニには発注が毎日あるように、納品も毎日あります。
発注したものがその数量納品されます。
ある日納品のトラックが店舗に来て、普段と変わらず業者さんが店舗に商品を搬入してくれていました。
そんないつもと変わらない日常のような光景のなか、ただひとついつもとは全く違った光景を目の当たりにします。
業者さんが搬入したある商品の段ボールの数が異様に多いこと。
発注は電子端末でピコピコと入力できることから数量の入力を誤っておこなってしまった。ということも時には起きてしまいます。これを誤発注と呼びます。
搬入業者のある商品の段ボールの納品数があまりにま多かったので
と、自分で発注の入力を誤ってしまったのかと考えました。
しかし、その発注をおこなう電子端末で発注の履歴を確認するとその大量に納品された商品を発注した履歴がありませんでした。
通常1週間に20個売れればいいものが約500個ほど納品されました。
こう見ると1週間に20個売れたとして500個納品されても25週で売り切ることができる。とも捉えられるのですが
その商品は消費期限のあるものでした。
25週 = 約半年
そんなに売れるわけがない。そして自分で仕入れたものでないため消費期限が訪れた時の廃棄の問題はどうなるのか。そもそもなぜ、無断で発注をおこなったのか。
このことを担当していた本部社員に問いただしました。
すると返ってきた言葉は
「売れるから大丈夫ですよ」
数年前の事なので、やり取りの中の細かい言葉は異なるかもしれませんが、このくらい軽い言動、軽く考えているなと捉えられる返答であったことは間違いありません。
納品されたからには、消費期限があるため在庫として眠らせるわけにはいかないので拡販できるように売り場を確保し、POPを作成します。
店舗側も売りさばこうと試行錯誤しましたが、結果その商品は100個近く消費期限を迎えました。
あまりにもその本部社員により、無断発注された商品の廃棄の個数、金額が多いため、廃棄処理をおこなうのを一旦保留にしました。
ここまでが、筆者が某コンビニエンスストアで勤務をしていた際に実際に経験した本部社員による無断発注の一例です。
※数年前の出来事のため商品の数量や本部社員の言動は多少異なっている場合があります。
今回ご紹介したのは一例で、他にも本部社員による無断発注を目の当たりにしたことがあります。
なので今回セブンイレブンやファミリーマートで発覚した本部社員による無断発注は「氷山の一角である」と感じています。
最後に
コンビニエンスストアの経営、加盟店になられた方は本部と契約を交わしています。
10年や15年店舗を運営するという契約です。
その長い時間の中で様々なことが起きます。
強盗に入られた
懇意にしていたお客様が亡くなられた
などなど、心を痛めることが幾度とあるかもしれません。※上記はすべて筆者のコンビニ人生の中で起きたものです。
そんな心を痛めることがある中で1番心を痛める心苦しいことはパートナーに裏切られることです。
今回、無断発注を発見した店舗の方は大変心を痛めたと感じます。
加盟店は本部の方をパートナーと信じ、店舗を良くしよう、お客様に笑顔になってもらおうと同じ志を持った同志としています。
そんな同志にお店のお金を勝手に使われる。
ということは、不信感でしかありません。今後長い時間、店舗の契約がある中でビジネスパートナーである同志との間に不信感が生じたまま、いい仕事、いいお店づくりはできるのでしょうか。
お客様に満足していただくことはできるのでしょうか。
ファミリーマートやセブンイレブンで本部社員による無断発注を告発した、勇気ある加盟店様の想いはコンビニエンスストア本部にほんとうに届いているのでしょうか。
今回その勇気ある加盟店様によって公になったこのコンビニエンスストア本部社員の無断発注騒動
筆者は今後も、このコンビニエンスストア本部と加盟店の中に未だにある”溝”を発信していきます。
今回ご紹介したコンビニエンスストアの本部社員による無断発注騒動意外にもコンビニエンスストア本部と加盟店の中にある”溝”についてご紹介している記事があります。合わせてご覧ください。